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08年6月27日付けの小話が非公開のままになっていました。
お話自体は終わってるようなので公開してみます。
ぺぺろんにも実はいる男性主人公が登場します。
注釈から本文からすべて08年当時のままで未編集です。

 * * *

※一年は組と土井先生の他に、
 「宵のみぞ知る」ヒロイン「高槻透子(たかつき・とおこ)」の
 性転換バトン回答から派生したキャラクタ
 「斐伊川栄(ひいかわ・さかえ)」が登場します
 (彼の口調の練習です)。

※名前変換ができません。

苦手な方は回避してくださいね。
つづきから。






ずいぶんとまァ、明るい怪談もあったもんだ。

と、斐伊川栄はまずそう思った。
黄昏時の空はすでに薄闇に染まりかけている。
彼が通りがかったのは、
火薬を管理する焔硝蔵の前だった。
そこから泣き声が聞こえてくるのである。
その泣き声があんまりわんわんと、
賑やかしく喧しく、たいへんすこやかであったので、
彼はその状況を明るい怪談とたとえたのだった。
もちろん、心としては冗談である。

こりゃあアレだな、例の洗礼か。

彼はすたすたと、歩いていって、
頑丈な戸に通されたかんぬきを外してやった。
群生するきのこのように群がった十一の頭が、
いっせいに彼を見上げた。

「よォ、一年坊主ども。何をやらかした」

答えられず、子どもらは安堵のためか、
ふたたびわあっと泣き出した。
懐かしい井桁模様の一年生の制服。
評判に聞く一年生各組の特徴と照らし合わせ、
また場が焔硝蔵であるということも考慮して、
トラブルメイカーと名高いは組だろうと見当をつける。
クラス単位の評価はそんなものだが、
彼の級友をはじめとする最上級生、
委員会の委員長達がくだす個々の生徒への評価は
割と好意的なものが多い。
忍としてはよろしくないのだろうが、
いい子揃いということだろう。
裏付けでもするかのように、
子どもらはしゃくり上げながらも、
彼に礼を言おうとするのである。
栄は彼らの目線近くまでしゃがみ込んだ。

「あの土井先生を怒らせたな?
 焔硝蔵に閉じこめるなんざ、
 なかなか気のきいた説教だ」

年に一度はどっかで見る光景だなと
さばさば言いきる栄を、一年は組の面々は
ぽかんと見つめていた。

「なんだ、物珍しそうな顔して」

問い返すが、実際に物珍しかったのだろう。
どこの委員長でもない六年生。
接点が多いと思われる委員会活動にも
栄はほとんど顔を出していない。
従ってどの後輩達とも面識があるとは言い難い。

「先輩は、あの」
「六年生でいらっしゃいますか」
「ああ、ウン、六年ろ組の、ヒイカワサカエ」

短く答えると、子どもたちは彼の名を口々に反芻し、
やっぱり心当たりがないと言いたげな顔をしたが、
栄は特に気にかけなかった。

「で・何をやったんだ、おまえら。
 こんな仕打ち、よっぽどの罰だぞ」

子どもたちは口々に抗議した。
彼らはよかれと思ってしたことであるのに、
危険をかえりみずに判断を誤ったものとして、
土井師範は子どもたちに罰を与えたのだという。
閉じこめられて、最初こそ抗議していた彼らも
次第に熱が冷めていき、
ひとりが泣き始めてしまうと
あとは連鎖するばかりだったらしい。
ハァ、と栄は呆れ調子で息をついた。
そこへ土井師範が慌てた様子で現れた。

「斐伊川! ダメじゃないか、せっかく……」
「あァ、土井先生」
「あーもー、反省させているところだったんだぞ、
 おまえだったらそれくらいわかってただろう」
「わかってましたよ、俺もやられましたもん、
 こんくらいの頃」

栄は子どもたちを示しながら土井師範を見上げた。

「……おまえらの学年は問題児揃いだったというからな」
「ご冗談を、精々こいつらといい勝負でしょ」

栄は立ち上がった。

「説教は充分効いてると俺は思いますよ」
「私も思うけどね」

だから来たんじゃないか、と、土井師範は呟いた。

「お互い冷静になったところでしょ」

さっさと焔硝蔵を出ながら栄は言い、最後に振り返った。

「そいつらにはそいつらの正義があるんですよ。
 話、聞いてやったら」
「……言われるまでもないっ」
「あは そぉすか」

冗談めかした笑みを残し、
栄はさっさと踵を返すと食堂へ向かって歩いていった。
その背を見送り、一年は組の十一人は、
見慣れない新しい先輩の名前とその姿を、
しっかり脳裏に刻み込んだ。



 * * *



■言い訳
今日の帰宅時、わんわん泣いてる子どもがいた。
家に入れてもらえなかったらしい。
こわいよこわいよと言っていた。
でもその子にはその子の思うところ即ち正義があり、
それが大人の判断により否定されたゆえ
現状が招かれたのであろうと思った。
学園に思考を飛ばしたら、
土井先生がは組に説教食らわす図が浮かんだ。
そういう発想でした。
 
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のねむ
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