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※朝に打って 眠くなって中断して
 夜戻ってまいりました な 日記 です


おはようございます。
六時半です。
早起きではありません、徹夜明けです。
今ちょっと・寝ようかどうか迷っています。

このあいだ戦国武将の奥方さまのどなたかで、
生涯で三度の政略結婚を余儀なくされた人がいて云々
という話を耳にしまして。
心当たりを調べたのですが誰なのかはわかりませんでした。
これを忍に置き換えたら面白くなるかなと思って
考えたねたを放り投げていきます。

なぜかしら・こういう妄想の相手は
まず文次郎になりがちです。
うごかしやすい、と思ってしまうようで。
ヒロインのお名前は
デフォルト名の「高槻透子たかつき・とおこ)」を
使わせていただきます、ごめんなさい。
ヒロインが超絶美人というのは
ぺぺろんの基本設定です、ごめんなさい。
美女美少女がすきなんです、ごめんなさい。
例によって専門知識などは皆無です。
時代考証などの努力もしておりません、
雰囲気でお楽しみいただければさいわいです。

あ でも部分的にちょっとえっちい雰囲気です
初夜の寝所が舞台なので

……でも一回だけやってみたいのだ
美人とは言えないヒロイン、のおはなしを。
彼らがべたぼれてくれる要素の中に
「美人」という条件を入れられないという高難度。
それだけで閲覧者さんのご支持をいただける率が
どこんと下がる気もいたします。
チャレンジですねぇ(笑




婚礼の宴に賑々しかった城内はいまや
うってかわってしんと静まり返っている。
静けさが肌を逆撫でて、
夜着一枚を巻き付けた格好で
寝所に座って待つばかりの透子は、
夏の夜だというのに ふる、と震えて我が身を抱きしめた。
身分ある家の、姫君と呼ばれる立場に生まれてしまった以上、
こうした巡り合わせは致し方がない。

男たちの権力争いとまつわる駆け引きとの中で、
透子が誰やらに嫁すということは
戦局に大きな動きをもたらすのだ。
すでに透子の胸の内にはあきらめに近い感情くらいしか
わき上がっては来ない。
なにせ、誰かの妻になるのはこれで三度を数えるのである。
過去に夫と呼んだふたりの男は争いに敗れて命を落とした。
透子がいまこうして・また別の男の妻の座にあるのは、
透子の生まれと二度の婚姻とによって派生した
複雑な身分と人間関係、
そのうえに成った立場のその価値のため。
また輝くばかりのその美貌のためであった。

透子の夫が失脚したと知るや、
多くの男たちが透子を妻にと願い出た。
両の手で足りるかどうかというほどの人数が
透子を請うてきたというのに、
その中から意に添う誰かを選ぶ権利は
いつでも透子には与えられなかった。
そうして此度も・政をうまく運ぶための橋渡し役として、
透子のこの城への輿入れが決められた。
相手の男は名こそ天下に鳴り響く勇猛果敢な武将であるが、
どうしたことかこれまでさっぱり
女に興味のある素振りを見せてこなかった。
焦るは周囲に仕える者たちばかりで
当の本人は飄々とし続けていたので、
この婚姻が正式に決まったそのときには
驚き耳を疑った者が相当大勢いたという。

考え事にふけっていると、
ふいにす、と明かり障子が引き開けられた。
満月の明るい光が衝立の向こうから射し込んできて、
透子は思わずうすく目を眇める。
男は透子が布団の横に座しているのを認めると、
後ろ手にまた明かり障子を閉めた。
つかつかと荒い歩調で歩いて来、
布団を挟んで向かい側にどっかと腰をおろす。

最初に顔を合わせたときから数度の会見の機会、
婚礼の宴の最中に至るまで、
この男は透子にほとんど一言も声をかけていない。
ああ、今度も同じだものね、と透子は思うだけで、
落胆などはしなかった。
愛されて望まれた女ではないのだ。
政における有利な立場を、国を治めるに必要な利益を、
跡を継ぐに相応しい男児を産み育てることを、
それだけを求められている。
男たちにとって透子が女であればいいのは、
寝所の中で己が身体の下に組み伏しているその最中だけだ。

男はいまもまた何も言わなかった。
黙り込んで腰を浮かせ、布団に入る仕草を見せたので、
透子もそれに従った。
男のすることはやたらめったら気だるそうな調子だった。
勿体ぶって透子の夜着の帯紐を解き、拭うようにして剥ぐと、
あらわになったその肌をろくろく眺めもせずに
首筋にかぶりついてきた。
透子はふ、と息をつき、
夫から目を背けるようにして横を向いた。

(もう三度目だもの)

これまでの夫はふたりとも乱暴者で、
嬲り痛めつけるような伽を透子に求め続けた。
それを思えば、
今更なにがどうだろうと耐えるも耐えないもない。
夫が満足して離れてくれるのを待つだけだ。
透子は目を閉じてじっと、
眠ったように待ちの姿勢を保ち始めた。
と、胸元をまさぐろうとしていた手がとまり、
男は透子の首筋に埋めていた顔を上げると怪訝そうな顔をした。
なにか奉仕しろとでも言われるのかしらと、
透子は内心うんざり気味に考えた。

「……透子」

初めて名を呼ばれて、
透子は面倒くさそうな仕草を隠しもせずに、
そらしていた視線を夫へ投げ返した。
夫はなにかもの問いたげな顔をしていたが、
おもむろに身を起こすと、
先程己の手で脱がせた夜着を透子の胸元に掻きあわせた。
あまりに予想外の行動で、透子はぽかんと夫を見上げた。
夫はそのまま、己の身なりも乱暴に整えると、
さっさと立ち上がって部屋を出ていこうとする。

さすがに透子も慌てて起きあがった。
この男の気を損ねたら、
透子の家族が血を見る目に遭うかもしれない。
己を政治の道具に使った男どもでも、家族は家族で、
大切は大切で、それなりに愛してもいた。
やりすぎてしまったと透子は焦り、
廊下に出てしまった夫を追って明かり障子を引き開けた。
夫はまだほんの数歩程度先に行っただけで、
月明かりを負って立つ中庭の桜の古木を見やっていた。

「文次郎様」

夫は振り返った。
何事もなかったような顔をしている。

「……申し訳ございませぬ。
 ご機嫌を損ねるような真似を」

文次郎は不思議そうに瞬いた。

「別に?」

今度は透子が首を傾げる番であった。

「それでわざわざ起きてきたのか。
 風邪を引くぞ、その格好では」

わけがわからず、透子は答えることができなかった。
察したように、文次郎がそのまま話題を引き取った。

「……気を損ねて途中でやめたわけではない。
 たしか俺で三度目だったなと、思っただけだ。
 お前の、……輿入れのことだが」

透子は素直に頷いた。
透子がこれまでに誰の妻であったか、
何人の男の妻であったか、
それは隠されるようなことではなく、
少し政治に近しい者なら誰しも知っていることだった。
文次郎とていまになって、
他の男と関係したことのある透子を
責めようなどと思うわけがない。

「あきらめてしまっても仕方がないのだろうな。
 ……確かに、お前が誰に従っているかで、
 国ひとつの命運がいとも容易く動いてしまう。
 従順でいることも賢いと言えるのだろう」

己の内心を正しく見抜かれていたことを知り、
透子の頬にかっと熱が宿る。
この男、噂に聞く以上の切れ者だ。
謀略策略にとどまらず、
男女のあいだの機微を読むことにまで気が回るとは。

「……お前が俺の元へ来たことで、
 この国には莫大な利益がもたらされる。
 少しばかり待てば、民の暮らしも潤うだろう。
 もうずっと小競り合いを繰り返してきた奴らとも、
 対等以上に渡り合えるようになる。
 願ったり叶ったりだ」
「……それは、ようございました」
「ありがたい」
「はい」

答えながら、透子はなにか腑に落ちない思いで
目の前に立ったままの夫を見つめた。
これまでの夫達とは違う物言いをする。
透子が仕えて尽くすことは、これまで当然とされてきた。
ありがたいなどと言われたことはただの一度たりともない。

「……ただ」

文次郎が低い声で続きを語りだしたので、
透子は答えるかわりに目を上げた。

「お前を欲しがった他の大勢の男たちには
 恨まれる羽目になったろう。
 手段を選んでいるいとまもなかったからな……
 見る奴が見れば卑怯なやり口で、
 俺はお前を得ることができたんだ」

文次郎がなにを言いたいのか、
透子にはよくわからなかった。
問うように見つめるだけで、言葉のひとつも出てこない。

「……政のためだけと思って、
 お前を欲したわけではない。
 できればこの城に慣れ、この国と民とに慣れ、
 俺にも慣れてくれればこの上ない。
 ……俺の妻でいることに、だ」

枕を交わすのはもう少々打ち解けてからでいいと
ぼそりと呟かれ、なんと答えたものか決めかねて、
透子は迷い迷い、とりあえず はい と呟いた。
透子が文次郎の話し方に納得していないことを、
文次郎もぴりぴりと肌に感じていた。
その空気に問いつめられでもしたように、
彼は覚悟を決めて口を開いた。

「……思えばお前も気の毒なことだ。
 己の意思で夫を選ぶことも許されない。
 好いてもいない男を
 生涯で三人も相手にせねばならんとは」

聞きながら、透子はじわじわ、それを悟った。
この男はきっと、
過去透子の夫であった男たちとは違う人間なのだ。

「……俺で最後にしてやる」
「……え、」

動揺したような声で聞き返され、
文次郎はひどく言いづらそうにはしていたが、
思いきったのか・透子を真正面に見据えて一息に言い放った。

「……死ぬ覚悟をいつもしていた。
 このような世だ、
 いつどうして命が絶たれるかはわからん。
 陣に出るときはいつも、
 ここで死ぬれどただそれはそれ、
 俺に課された命運だと、そう思ってきたんだ。
 だがやすやすとは死ねなくなった、
 ……お前がここへ来たから」

透子は目を瞠り、
文次郎がまっすぐにぶつけてくるその言葉を、
ただ聞き受けるよりほかにできることがなかった。
こころにそのまま刺さらぬように、
話半分に聞いてやるような余裕もうまれなかった。
これは、相当回りくどい、前置きの長い、
……透子が生まれて初めて耳にする、
告白の言葉なのだ。
つづく言葉を待つ己が、
期待しているのかおののいているのかは
判じられなかった。
どちらともつかぬふるえが、
静寂に撫でられてもたらされたわけではないそれが、
透子のゆびさきにかすかに宿る。

「……だから、俺で最後にしてやる。
 もう他の誰の元へも嫁かずによいようにしてやる。
 どんな激しい戦場へ赴こうとも、
 必ず生きて戻ってくる。
 ……俺で不足は承知の上だが、」

核心に迫ると彼はさすがに言葉に詰まった。
ぎこちない調子で、続けた。

「そうすることで、俺は俺なりにだが、
 ……お前を守ってやれる」

聞いて透子は、思いがけず、涙をこぼしていた。
文次郎は狼狽えた様子もなく、
黙ったままで透子がそうしているのを見つめ続けた。
涙するのをそのままに、
待ち続けてくれた相手は透子にとっては初めてだった。

満月が静かにふたりを照らし、
桜の古木は青々茂る葉を風にざざ、と鳴らしている。
晩夏の夜のことであった。

 * * *

防御できずに聞いた言葉が
まっすぐこころに刺さったら泣いてしまうと思う。
となると人は他人の話なんか
だいたい防御して聞いているんじゃなかろうか。
そうしないと傷ついてしまうような言葉を
乱射する人も、きっと社会には多かろう、。

こういう「君を守る」にもときめきます。
更新ができない分の小話でした、
お粗末様でございました。
 
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のねむ
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