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拝啓 ユキさん

文をどうもありがとう

お返事が遅れましたことをどうぞお許しください

冬と一言で表しても様々にあるもので

こちらの冬はすべて雪の白の中に埋もれてしまいます

どうやらユキさんの文も

そのために到着が遅れたもようです

お返事を差し上げる今日この日は弥生の十日

さすがの雪国もそろそろ春めいては参りました

雪深き見知らぬ土地に住まうとあれば

わけもなく心許ない思いを抱くこともあるものですね

そんなときはよくユキさんのことを思い出します

お屋敷を抜け出して河原で石を投げ水切りなどして

お勉強をさぼったりもいたしましたっけね

北の国は寒いけれど

人の心はあたたかいからと夫が申しておりました

慣れないことばかりで戸惑いもいたしますけれど

新しい生活も悪いことばかりでは決してありません

弥生三月ともなれば

そちらは花もほころぶ頃でしょうか

こちらはまだまだ雪の六花ばかりが咲くのだそうです

ひどい年には皐月の頃まで続くのだとか

まるで自然が耳元に息づいているかのように

日々近々と感ぜられます

口惜しいことにはあの愛しき秋の花

金木犀がこちらで咲くことがないということ

季節の違う話だけれど

そのようなことを知るにつけ

遠く離れてきてしまったことが身にしみて思われます

遊びにいらしてと簡単には申し上げられない遠方から

せめてユキさんがお元気でいらっしゃることを

心から願っております



本音を申し上げますれば

あなたはあなたの目でもって

ご実家のためならずただただご自分のため

ひとりの殿方を選ぶことができますように

同じ困難の待つ未来であるならば

より幸せな道を見出せますように

雪に埋もれて寒さにまかれて

それでも私が幸せであるように

いつかあなたの身の上に

果てもないほど幸せが降りそそぎますように



もうひとつ願わくは

この文がユキさんのお手元に無事に届きますように

河原であの石が七回 水を跳ねていったように

少々の困難なら越えていってくれることを

最後の最後に願います

どうかあなたもお元気で

風邪など召されませぬよう 怪我などなさいませぬよう

御家族と仲良く お友達と仲良く

あなたとあなたのまわりのすべてのものが

しあわせに満ち足りてそこにありますように



弥生十日

春近き北の国より 柿崎のねむ






言い訳
上手ですねぇ。

針を運ぶ手元に注がれる視線。
彼は心底感心したような口調でそう言った。

「毎日やってることだもの」

海に出る許しが我が身にもあれば、
針仕事にばかり精を出さずともよいはずだと、
もうお決まりになってしまった愚痴をこぼす。
水軍精鋭の中では最年少だろう、
網問はまだ少し幼さの残って見えるまなざしを
じっとその針と糸の軌跡に向けている。

「……昔・僕の生まれたところではね」

静かな声が語り始める。
返事はしなかったが、
チラと彼のほうを見やると視線が合ったので、
ここに語り手と聞き手の役が成立したことを知る。

「女の人の針仕事は、
 とても大切な意味を持っていました。
 刺繍の一番上手な女の人が、
 村長の息子の花嫁に選ばれるんです」
「……お嫁さんに必要とされる技能だったのね」
「はい」

網問はまた、彼女の手元に視線を戻す。

「……花嫁さんに、なれますよ」
「誰の? ウチの“村長”だったら、お頭?」

冗談めかして答えると、網問はくしゃりと苦笑した。

「水軍の中の、こういう……ひとの関わり方には、
 僕はびっくりしました。
 僕が元々は外から来たせいだろうけど」
「そうね。私には違和感がないもの」
「でも、好きな人がひとりだけできたら、
 考えが変わったり、するんでしょうか」

誰のことを言っているつもり、と、
網問に聞いてみようかと思ったけれど、
なんとなく口を閉ざしてしまった。

「規律ではないもの、従う必要はないのよ。
 網問は網問で、いつかそのときが来たら選べばいいわ。
 あなたが必要とするのは、
 刺繍の上手なひとではないかもしれないけれど」

笑ってみせると、つられたのか、網問もにっこりと笑った。

「僕はまだ、全然です。先の話ですよ。
 でも、……僕の手の届く距離にいる人たちには、
 みんな幸せになってほしいなぁ って」

針先を見つめていた視線を思わず上げた。
網問は意味を含めているのかいないのか、
少し切なげにも見える目をして、微笑んだ。






言い訳
いろいろ思わせぶりな人やものが出てくる。
あとから伏線と繋がったり、
ぺぺろんで出している別の話と繋がったりするから。
途中で出てくる少年はきり丸を意識しているけれども、
実際は正反対かなとも思う。
きりちゃんは恵んでちょうだい的な言い方をしなさそうだ。

繋がるといえば、
八話目への繋がり方もわざとらしくて厭らしいなぁ!
誰が訪ねてきたのかは、想像してみてください。。
3月
6日/21時、23時
7日/0時、1時、6時、22時、23時

■拍手/6日 21:02「こんにちは、『……」~
こんばんは、さっそくありがとうございます!
なんだかんだ独り立ちしてやっております……
実生活のほうはですね、料理は嫌いじゃないので
しっかりごはんは食べられるのですが、
整理整頓とか掃除とかもう、下手という次元を越えて
興味がないのでひどいことになっています。
でももう一回引っ越すなら荷物開けなくてもいいか とか。
風邪で鼻息のできないまま二編くらいお届けいたします。
ヒロイン部屋はもう少しものが出揃ったら
告知しないでひそっと出そうと思っています。
以前お許しいただいたアレアレが仕上がりましたら、
展示の御許可をいただきに伺うやもしれません。
そのときは何卒……
ではでは、コメントと御心配を;
ありがとうございました!
御迷惑でなければまた絵チャットなど御一緒させてください。


拍手をくださった皆様、ありがとうございます。
久々だし更新自体はないしで、
反応があったこと自体にちょっと感動です。
今後もぽつらぽつら、ペースはのろのろですが
よろしくお願いいたします。
時期ものをひとつ消化。
創作キャラがばっつり出てくるので警告付き。
別にエロくもグロくもなければ暴力描写もない。
小平太の(本人無自覚の)言葉の暴力(?)だけ。

女性創作キャラは「小夜」さん、
男性創作キャラは「八曽助」さんで決まりらしい。
ヤソスケって名前が
のねむが持ってる別のハンドルネームに偶然似ている。
なんでやねん
 
プロフィール
HN:
のねむ
性別:
女性
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