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本編も8話とかかかって、まだ春だったりする(殴
食満くんの重たい番外の一とどっちを出そうか迷って、
テイスト軽めな方にした。
血の気が引く、

という言葉の意味を初めて知った。
頭ではわかっていたが、身体中で感じたのは初めてだった。

祝言の夜、祝いの儀式が始まるその直前、
恐らく内々に声密やかに伝えられてきたであろう知らせ、

「花嫁の姿が、ありません」

動じないほうがどうかしている。
仙蔵と、花嫁たる彼女とは幼なじみで、
お互いによく見知った仲である。
婚約は幼少時に親がノリノリで結んだもので、
抗う余地のあるなしというより、
それが仙蔵にとっては当たり前の将来の予定だった。
彼女もそのつもりでいるはずだと疑いもしなかったから、
この知らせを聞いて彼の頭の中は一瞬まっ白になった。

「履き物は表玄関のほうに残っておりまして……
 恐らく、なにも履かず、縁側から庭へ出て、そこから……」

祝言当夜に花嫁に逃げられた花婿?
この私が? あり得ん。
とりあえず頭の中では強そうなことを思うが、
握りしめた手はぶるぶると震えるばかり。
待ってばかりいられようか? 否。
仙蔵はすっくと立ち上がった。

「……探す」

あたりは暗い上、花嫁が逃げ出してから
どれくらいの時間が経過したかもわからないが、
一流の忍を舐めてもらっては困る。
彼は走った。

なぜ彼女は逃げたのだろう。
当夜になって、ぎりぎりのところで、なぜ?
闇の中に彼女を探しながら、仙蔵は考えた。
本当は、この婚姻を望ましく思っていなかったのか。
仙蔵が学園で修行の日々を過ごすあいだに、
他に想う男でもできたのか。

どうして己は“それ”に、その予兆に気付かなかったのか。

けれど、卒業して、忍として暗躍する日々の裏、
顔を見せるたびに彼女は笑って仙蔵を出迎えてくれたものだ。
些細なみやげや贈りものに顔をほころばせ、
彼がそばに寄ることにいやという顔をせず、
抱き寄せると恥ずかしそうに目を伏せ、
初めて口付けをした日には
照れのあまりの涙まで見せられた。
純情を絵に描いたようなとはよく言うが、
身近で目の当たりにするなどとは仙蔵も思ってもいなかった。
彼女の返してくる反応が新鮮で、それがまた愛おしかった。
あれが嘘だったとは、彼には到底信じられない。

婚礼用の衣装が目の端でひるがえったのが見えた。
彼はたちまち、彼女に追いついた。
その腕を掴み、引きずるように振り返らせた。
彼女は泣いている。

「……はなして!」

悲鳴のような声で叫ばれて、
彼はやがて握りしめた腕を開放してやった。
なにも言えそうもなかった。
この娘の泣いた顔に、仙蔵はこのうえなく弱かった。
言ってしまえば、笑った顔も怒った顔も、
照れた顔も困った顔も皆好きだったし、
どの顔にもこのうえなく弱いというのが本当のところである。
世の中はこれを総じて惚れた弱みと呼ぶのだろう。

「……帰ろう」

彼女がなにも言わないので、彼はそのまま踵を返した。
彼女は素直にあとに従った。

「……仙ちゃん」
「なんだ」
「怒らないの」

仙蔵は少し間をおいて、
別に、
と答えになっていないことを答えた。

「仙ちゃんて、昔から、私の顔色伺ってばっかり」

よく知ったはずの幼なじみの声が別人のそれに聞こえる。
宵闇の魔術のせいか、高ぶった感情のせいか、
婚礼衣装に身を包んだ彼女の眩いばかりの美しさのせいか。

「……仙ちゃんが、追いかけてきて、くれるかなって、」

そう思ったの。
彼女の思いがけない言葉に、仙蔵は歩く足を止めた。

「試したの。ごめんなさい」

彼は振り返った。
彼女は俯き気味に、申し訳のなさそうな顔をしている。

「だって、仙ちゃん、今日になってもいつもどおりすぎて、
 私だけが、舞い上がってるんじゃないかって、」

その目にまた涙が浮かび、ぽろぽろと頬にこぼれた。
それすらも花嫁姿を彩る珠飾りのように
思えてしまうのが不思議だった。

「……きらいになった?」

この娘はこの期に及んで本気でそう聞いているのだろうかと、
仙蔵は少々呆れ混じりに息をつき、
また先に立って歩き出す。

「馬鹿」
「……ごめんなさい」
「好いてもいない女を、馴染んだよしみだけで誰が娶るか。
 そこまで酔狂じゃない」
「……知ってる」
「じゃあ聞くな」
「……知らないことなら、聞いてもいいの」

なんのことだと問うかわりに、
彼は彼女をもう一度振り返った。

「私のこと、少しは好き、仙ちゃん」

素直で純粋な目がまっすぐに仙蔵を見上げてくる。
この無邪気の前にあっても彼は弱い。
ポーカー・フェイスもとうとう保てず、
彼は苦い顔で視線をそらしてしまった。
それがなによりの答えであろうに、彼女はまだ問おうとする。

「すきっていって」
「好きでもない女を娶ったりしないと言っただろう!」
「それ、ちょっとちがうの」

煩い、さっさと帰るぞと無理矢理場を切り上げ、
仙蔵はすたすたと歩き出した。

儀式が終わって、人も皆寝静まるような夜更けがきたら、
嫌と言うほど耳元に囁いて、
その身体に忘れられぬほど教え込んでやろう。
そう考えたなどとは、到底白状できそうもない仙蔵だった。






言い訳
27日/20時
28日/23時

拍手をくださった方々、ありがとうございます。
昨日からだったんですがコンプできましたかね(笑

そうだ、投票、今私が見たところ99票なんです!
わーいなんかきりがいい。
100票目は誰なのかなーと楽しみにしています。
食満くん強いなぁー

ごめんなさい私ほんとなんかもうだめです
けまくんがすきです
文次郎更新しなきゃなのに食満くんが食満くんが
二文字タイトルシリーズの「照れ」と「唐突」の前に
長い方の番外編出そうと思います。
時間軸がそんな感じだから。
ほんとは冬休みの予定を話し合う頃よりは前の話だけど……

わたくし本屋におつとめしておりますが
給料大還元で本を買いますが(やばい ほんと
この間注文出した忍たま絵本が二冊まだ来ないの。。
出版社から書店に入荷するまでのルートには
実は取次というところを一箇所通っておりまして、
絵本は多分全国最大手の取次を通っているんですが……
この最大手取次をここでは仮に「2っぱん」と
呼ぶといたしまして(そのまんまです
この2っぱんが最近全国規模のシステムエラーとか
出したりしていて機能がヒドイことになっとったとですよ。

北海道という土地特有な点もあろうかと思いますが、
出版社から本を取り寄せする際、
入荷まで二週間が目安ですとお客さんに申し上げます。
まず出版社から取次先へ荷物が動くまでに一週間、
取次から書店に入るまでに一週間てことなんですが、
これは日数に余裕をもたせた目安です。
出版社から取次へ荷物が出されることを
「搬入」と申しまして、搬入日が割と早いようだと
二週間どころか一週間ちょいで入荷することもあります。
先述の目安通りに考えても、搬入日から一週間程度で
ウチのお店には入るつもりで私らはいるわけなんですが、
絵本14日搬入なんですよ。。
もう入ってて全然おかしくないんですけど!
注文担当のお姉さんがいろいろ調べて確認して、
「30日くらいには入るかなーってかんじです~ごめんね;」
と仰ってくださった。。
なんもなんもですよ お姉さんは悪くなかとですよ
でも出版社からウチまでのルートでなにがあったら
そこまでのびるのだろう。。教えて2っぱんさん!!

店員の注文品ならまだ遅れても許せるんですが、
一緒に路頭に迷ってるお客さんの注文品があるらしく……
その迷ってる品が全部で7冊あるって聞いたんですが、
全部ポプラ社の本らしいんですよね(笑
こりゃあ2っぱんが原因というわけでもないのだろうか。
別にエラー出そうが2っぱんがいきなり仕事の質を
下げるということじゃないですけど、
ウチのお店の2っぱん担当者さんが仕事よくないorz
言い訳と責任転嫁の嵐。
そのよく回る舌を別のことに使ってくれたまえよ。。

あっいつの間にか日記になっとるよ???
ぉぉぉ
とりあえず、おやすみなさいです。
文次郎に秋休みをやらんと……
15日/15時
18日/19時、23時
20日/0時、11時、21時
21日/23時
26日/3時、4時、21時、23時

拍手をくださいました皆様、ありがとうございます。
更新に反応があるとまた嬉しいなぁ!
頑張る気が起きるというもの。。
次こそ雪月花で! 秋休み編でちょっとらびゅーんに!
なんかあれですか文次郎月間ですか。
文次郎食らっちゃいますか。。






いろいろ個人的な呟きですが
俺の言っていることが嘘だったことがあるか?
ないだろ? 本当のことだろ?
人は自惚れということだってあるけど、
そうじゃないだろ?
俺は俺自身が優れているってことを、
よく知っているだけなんだ。
謙虚が美しいとは、俺はまったく思わないね。
ある才能なら見せればいいだけの話だろ?
妬む奴は、暇人なんだ。
そうは思ったことないか?
お前は女で、くの一で、俺とは多少は違うけれど、
俺と同じ人種のはずだ。
自分に気が付いている人間のはずだ。
だからお前も、自分を生かす道をちゃんと心得ている。
先輩よりも出来る奴だとか、お前もよく言われるだろ?
そういう人間は、意外といないんだ。
俺もお前も、たった1パーセントの人種ってやつ。
他の99パーセントを見下しているつもりではまったくないさ。
でも、俺は俺として普通にしていても
皆の上をいってしまうことがあるんだ。
俺には出来て当たり前のことを、
皆はしばらく努力しなければ出来なかったりする。
それで俺に非はないだろ、でも皆は俺を妬んだりする。
ときどき不安になる。
だからわざと凡ミスしてみたり、小さい算術間違えてみたり、
本音ではばからしくて絶対言わないような冗談を
言って笑って、道化を演じたりしてみせる。
そうしたら皆は、
意外と鉢屋三郎も普通っぽいんだなと思ってくれる。
あんまり人にはこの話をしないけど、
白い目で見られるしな、
でもお前ならわかってくれるだろ?
お前は俺ほど、99パーセントに馴染む努力が
出来ないたちらしいから、ハブられて寂しいだろうな。
そうだ、俺達は飛び抜けた1パーセントであるがゆえに
ときどきとても孤独だ。
でも俺とお前だったら、同じ人種だ、
わかり合えるはずじゃないか。
結束してどうしようってことじゃない。
……さっきも言ったが、
俺は俺が間違っていないことを知っているよ。
俺達はまわり皆よりもあらゆる点で優れて見えるんだ。
それは真実だ。
逆の言い方をすれば、皆は俺達よりもレベルが低いんだ。
それを口に出しては言わないけど、でも、
俺達の頭はそれをちゃんと知っている。
自分よりも下の人間に認めてもらっても、
俺はあまり意味を感じることが出来なかったりするんだ。
だからお前を見つけたときは嬉しかったよ。
やっと張り合いのある評価が聞けると思った。
お前なら俺を認めてくれるだろうと思ったんだ。
お前も同じことを考えただろ?
俺はお前を認めてるよ、お前の実力は本当に本物だ。
俺が言うなら信用できるだろ?
ちゃんと素顔を見せて言ってやろうか?
周りはいろいろ俺に名を付けたがるけどな、
千の顔を持つとか何とか、
数はともかくそれも間違っちゃいないけど、
化けた顔では言葉まで化けるとお前は思うかもしれないな。
俺は俺自身の考えでそう言うんだぜ。
お前は優秀なくの一になるよ。なぁ。

三郎がひとり語り尽くしているのを、
彼女はじっと耳を傾けて聞いていた。
彼の声が途切れたところで、彼女は口を開いた。

「三郎が他人に化ける才能というものを
 自覚したというのは、なんだか皮肉のようね」

三郎はわずかに眉根を寄せた。
彼は今、不破雷蔵の顔を借りているが、
雷蔵は普段そのような表情をつくることはない。
雷蔵の顔を真似ていても三郎は三郎であると、
彼女は思った。

「選べるものがたくさんあって、
 それをすべてこなせるというのはよいことのようね。
 けれどあなた、選ぶことが出来るの、たったひとつを?」

三郎は言葉を失った。

「あなたの言うことはよくわかるわ、
 私も同じ人種というのは本当のようね。
 でも、私は私自身が持っている、人より優れたその資質を、
 ときどきはすっかり無駄に使ってしまおうと思っているの。
 それで喜んでくれる人がいることがわかってね。
 それがとても、嬉しかったのよ」

しかし、三郎のほうは彼女の言っていることを
よく理解できないようだった。
彼女は笑って立ち上がった。

「1も99も、同じ人間だわ。
 世界を分ける必要はないってことがわかったの」

頭の上にはてなマークを飛ばす三郎を置いて、
彼女はさっさと行ってしまった。
取り残された彼は、彼女の言葉を噛みしめ、考えた。
考え続ける彼のそばに、
いつものように友人達が寄ってくる。
言葉を交わすごとに、思考は薄れていった。
しかし三郎は、そうして忘れかけたときにやっと、
彼女の言葉がわかったような気持ちになった。

俺の言い分だけで判じるなら、こいつら皆、
その他大勢の99パーセントってことになるんだな。
そんなわけがないって、
俺自身がいちばんわかってるのに。

誰もわかってくれないと、そう思っている自分こそが、
周りとのあいだに壁をつくっているのかもしれない。
三郎は己の真実をまたひとつ見つけたのだった。






言い訳
 
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のねむ
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