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ヒロインの過去編、ていうのは本当はあまり書きたくない。
いろいろな意味で話の山のひとつなのだろうと思いはすれど、 だからといってこの山を越えたところに 物語として大切な局面があるわけではなく。 だだ流しにいちゃつくだけの話になるしか末のないこの話は この時点で少し失敗気味と言える。 なげけとて月やは物を思はするかこち顔なるわが涙かな まるで泣き嘆けばよいと言わんばかりと、 月が私に物思いをさせているのでしょうか、いいえ、 そうではなくこれは恋の想いのため。 なのにまるで月がさせているかのように、 流れる涙を月のせいにしてしまったりして。(西行法師)
なにかとわざとらしい章。
あっちもこっちもあんまり気に入らない…… 今来むといひしばかりに長月の有明の月を待ちいでつるかな すぐに行くよと言ったあなたの言葉を信じ毎晩待っていたのに、 あなたは来てはくれなかった。 そうこうするうちに九月(長月=長い月)の月の出を 待つことになってしまったではありませんか。(素性法師)
この時代の傘のビジュアルなんてわかりゃしません。
天つ風雲のかよひ路ふきとぢよ乙女の姿しばしとどめむ 空をゆく風よ、願わくば天地を往来する天女達の通り道を 遮り吹き閉じんことを。 その美しい綾姿を、もう少しこの地に、 我がそばに留めておきたいとわがままを願うのだ。(僧正遍昭)
見合いの席にお茶を出すことは、
話のお茶を濁すという意味に転じるとも考えられるため よしとされない というのが本当のところです。 この話は本人同士に内緒の席だったので、 特別に桜湯なんか用意させるような不自然なことは しなかったという裏設定があります。 あはれともいふべき人は思ほえで 身のいたづらになりぬべきかな あなたにまで冷たくつれなくされてしまって、 これでもう私を想い悲しんでくれる人など思い当たりません。 私はこのむなしいままで死んでいくのでしょうね。(謙徳公)
15歳きり丸が数行独白し、
そのあとに本文が始まるという形式で進みます。 ときどき部外者達の画策が紛れ込み、 その際に形式も少ぉし乱れます。 ヒロインの想い人が誰であるか、きり丸をやきもきさせて 楽しもうという趣向ではございません。 過去の男にやすやす花を手折られるような甘ちゃんでは、 成長きり丸はないのです。 |
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