別に眠れぬわけじゃない。 お前と一緒になどしてくれるな。 ただ、この冷たい空気…… 冴え冴えと渡っていく冬の底を見ていると、 自分も芯から澄み切っていくような気がしはしないか。
なにを笑っている。 ロマンチストだなどと、お前に言われる筋合いはない。
もう明日だ、夜が明ければすぐの朝の話だ。 今更慌てたところでどうなるでもない。 やるだけのことはやったのだろうが。 腹をくくれ、男らしく。 ……ああ、女か、 わかった、わかってる、怒るな、冗談だ……
……よく考えれば、 この試験を落としたところで死ぬでもなし。 けれど必死にはならねばならん。 先の展望を、俺たちは掴みたがっているのだから。 そのために惜しむのは勿体のない話だろう。 今お前に、やり損ねたと悔いが残っているのなら、 こんなところで油を売っている場合ではないぞ。
……だが、まぁ、 がむしゃらにやりすぎるだけでも、 ことがすべてうまくはかどるわけでもなし。 道理は複雑にできているものだ、 明らかな根拠も理由もないことだというのに。 自然とか、いつもどおりでいられることが、 たぶんいちばんいいのだな。 そしておそらくそれがいちばん難しい。 けれど、わざわざ面倒に考える必要もないだろう。 あとはなるようになれ…… ま、楽しめれば、いいだろうな。
一緒にするなと言いながら、俺ばかりが喋っている。 ……誰かと話してみたかったのかもしれん。 なに、弱気になっているのではない。 此度の試験はお互い競い合うでもない、健闘を祈る。 そろそろ眠ろう。
難しい事情もなにもかもをすっ飛ばして、 最後には皆で笑えたらいい。 ……ロマンチストと呼ばれても、 否定ができない気がしてきた。 夢見がちなところは、俺にも少しくらいはある。 一流の忍にと声高に言い続けてきたのは俺だ。
せめてゆっくり休めよ、寝坊などするなよ。 お前は最後の最後でいつも詰めが甘い。 俺の隈はもう睡眠時間を確保しただけで 簡単に取れるようなものではないからな。 自分の身体のことは把握しているつもりだ、案ずるな。
では、明日。 お互い無理のなきように。
■言い訳 本屋は商品の売れ行きで季節や流行を知ったりする。 やったらセンター試験系が売れるなと思ったら。 みんな頑張ってるんだなぁ……! 私のまともな受験は高校受験だけでしたし; 実は今に至っても日程自体を知らないもので、 もう終わった話かもなと思いながら書いていました。 それはそれ……
ヒロインというより、 もう少し対等な、戦友的な関係かな、と思います、この人達。
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