潮江文次郎様
拝啓 秋の香深まる折、お変わりなくお過ごしでありますことを。 町は秋から冬への支度に追われて慌ただしい様相です。 そちらももう寒さを感じる頃でしょうか。 昔は布団を蹴飛ばして寝るたちだったあなたですから、 風邪などお召しでないかと心配です。 なによりもどうかお身体に気をつけて。
この季節だけ新しく店に並ぶお菓子を送ります。 御友人の皆様と召し上がってください。 南蛮には万聖節前夜祭という不思議な祭礼があり、 あやかしが出て家々をまわって悪戯をしようとするので、 菓子を与えて気を逸らすという真似事をするそうです。 象徴的に南瓜が飾られるお祭りだということなので、 南瓜を餡に練り込んであります。 これは私のアイディアです。 是非感想を聞かせてください。
それではこれで。 年末に帰省するまでに、 一度くらいは御返信をくださいますよう。
かしこ
追伸 金魚のもんじは、餌をいっぱい食べて大きくなりました。 成長するごとに目の下の黒いぶちが 小さくなってきましたが、 文次郎の目の下のくまは相変わらずなのでしょうか。 それも心配です。 ちゃんと寝起きして食事を摂る生活を心がけてください。
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(あ、あのアマ、 本当に金魚に“もんじ”ってつけやがったのかよ……)
ハロウィンの説明はかなり作り話。 伝言ゲーム的に伝わった知識はこの程度と思う。
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