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こういう妄想ならあったよ、ということで、
出してみます。
『夢醒めやらぬ』へ一票をくださいました方へ。
お心をお寄せくださいましてありがとうございます。
捧げものがえろい話とかひどくてすみません。
すごくすごくお若い方だったらどうしようorz
あと『世界の終わりに君とふたりで』が
お嫌いだったら面白くない話ですorz

あ、あと、まさかの(なんです)
雨シリーズに清き一票をくださいました方、
ありがとうございます!
世界を敵に回しても、もまさかのです(殴
ブログで話題に触れたのが
ご投票いただく前でしたもので、
お礼を申し上げられなくてすみませんでした。



※続きのリンクから小話をご覧いただけますが、
 ヒロインの名前が変換になっておりません。
 デフォルト名高槻透子たかつき・とおこ)を
 そのまま使用しています。
 あと宵ヒロインが出てきますorz
 ご注意ください。


透子と連れ立っての旅は学園到着をもって
無事の終焉をみた。
門をくぐるなり目ざとく二人を見つけたのは
校医としてつとめる善法寺伊作である。
ずるずると引きずられるように
連れて行かれた先の医務室には、
なぜか例のメンバーが全員そろっていた。

「おい、なんだ、同窓会か」
「まあ、皆様。お久しぶりでございます」

呆れ返る文次郎の一歩後ろで、
透子は慎み深く頭を下げた。
皆がそれにならって会釈を返しながら、
文次郎にはにやにやと嫌らしい笑みを寄越す。

「この、文次郎っ!
 隅に置けないな、このー!」

小平太がからかうつもりで繰り出した肘鉄を、
文次郎は青い顔をして避けた。
そばに立っている妻をかばうことも忘れない。

「な、なにが、だ……!」
「言わせるつもりかー!」

会話に主語はないがなんとなくことを悟り、
文次郎はちらと透子を振り返る。
透子は苦笑してささやいた。

「……診断をしてくださったのは、
 善法寺様なのです」

文次郎はキッと伊作を睨み付けた。

「テメ、なにを言いふらしてやがるんだ……!」
「いいじゃない、おめでたい話だもの!
 楽しいよ、子どもって本っ……当に可愛いよ。
 うちももう六つになるけど……
 時間の過ぎるのって早いなー」
「お、俺だってつい一昨日聞いたばかりだ……!」
「よかったじゃない。
 ご実家にも報告できるタイミングだったんだし」

文次郎はそこでぐっと言葉に詰まった。
結局そのあたりは透子まかせで、
己は一歩も実家に近寄ることができなかったのだ。
さりげなくそれをかばうように透子が微笑んで、
ありがとうございます、と一同を見渡した。

「さ、ほら、文次郎、入ってお座りよ。
 お茶をいれるからさ。
 透子さんも、立ちっぱなしじゃおつらいでしょう。
 だめだよ文次郎、
 夫が妻を真っ先に気遣えなくてどうするのさ」

文次郎はまたしても言葉に詰まる。
ばつの悪そうな顔で透子を振り返ると、
透子は幸福そうに微笑んで見返してくるばかりである。

「はは、相変わらず睦まじくていらっしゃる、透子さん。
 このように想われて、文次郎は幸せな男ですよ。
 しかし……男でも女でも、あなたに似ればいいが」
「黙れ、仙蔵……」
「赤子の頃から目の下にくまなどあっては気の毒だろう、
 いじめにあってしまうぞ」

文次郎は答えないことで無理矢理
話題を終わらせようと試みる。
伊作が一同に茶を配り、そこで少し場は落ち着いた。
のどかな時間の訪れに、
各々厳しい任務をくぐり抜けてきた身体が
すっかりくつろぐのを感じたらしい。
文次郎と透子とのあいだのおめでたい話題もあって、
医務室はいつになく穏やかな空気に満ちていた。

やがて授業終了の鐘が鳴り、
しばらくするとねこのような気取った足取りで
近づいてくる気配に皆が気づいて顔を上げる。
留三郎の妻のくの一が
授業を終えてやって来たところであった。

「透子さん! 聞いたわ、おめでとう!
 でもその身体で旅をするなんて、無茶な人ね」
「大事ありませんでした、
 文次郎様がちゃんと気遣ってくださいましたから」
「でも、これからはちゃんと管理なさってね。
 潮江くんは仕事で大半の日を学園にいるのだし、
 なんだか心配ね」
「大丈夫です、きっとなんとかなります」

透子はあっけらかんとそう言って微笑んだ。
その透子に微笑み返しながら・
くの一は医務室の中を一瞥するなり悩ましげに眉をひそめ、
男臭い、と言って透子を縁側に引っぱり出した。
厳しい夏の暑さも今日は少々和らいで、
日差しの下も心地よい。
女二人は並んで縁側に腰掛け、
久々の再会を喜んで会話に花を咲かせた。
そのはしゃいだ声を聞くともなしに聞きながら、
男衆六人は医務室の中にみっちりと詰まって
湯呑みを傾けるばかりであった。
どうも、女同士がそろうと生まれるこのテンションには
なにか一歩引かずにいられない。

「十月十日と言うけれど、予定はいつ頃なのかしら?」
「今年のうちには、たぶん……」
「年末年始にかかるかもしれないよ」

伊作が医務室から口を挟む。

「あら、じゃあ、ちょうどいいのではない?
 年末年始の休暇のあいだなら、
 潮江くんも家にいられるでしょう」
「どうだかな……男が役立つものとは思えない」

文次郎はつとめて興味なさそうに呟いた。
どうにかして
己らから話題がそれてくれないかと願ったが、
どう考えても無理そうだ。
くの一の嬉々とした表情は学生時代にも見覚えがあって、
この顔に出会うとだいたい己らは嫌な目に遭う。
なにか不穏な予感のする顔だ。
よくこんな女に惚れたもんだと留三郎を見やるが、
彼はにこにこと女二人の会話を見守る様子である。
慣れたのか、やりこめられるのが好きなのか、
どっしり構えているということなのか。
文次郎にはいまいち、
留三郎のこの反応が理解できていない。

「ね……透子さん、だとしたら、
 いつ頃身籠もったことになるのかしら?」

くの一が声をひそめて吐いたとんでもない問いに、
文次郎はぶっと茶を吹き出した。

「え……」
「さかのぼって数えれば
 わかるものなのじゃないかしら?
 離ればなれのお二人だもの……
 一緒に過ごした機会は忘れるほど多くはないでしょう」
「え、ええと、……」

さすがに透子もしどろもどろだ。
文次郎は大慌てで留三郎に抗議した。

「食満、てめぇ、あの嫁黙らせろ!!
 飼いねこの躾くらいちゃんとしやがれ、バカタレが!!」
「余裕のねぇ野郎だな、大声出すんじゃねぇよ」
「たぶん如月の頃か、せいぜい弥生だな。
 春休みかもしれないよ」
「伊作! お前も乗るな!!」
「え? ああ、ごめんね、
 僕いますごくお医者モードだったよ」

照れるよねぇ、と伊作は微塵も悪気なさそうに笑う。

「春休み……」

ぽつり、と透子が呟いたのを、全員が耳に留めた。
あら、とくの一が問い返す。

「心当たりがおありなのね?」

くの一の問うのもどこか遠くに聞くように、
透子は春休みのある一日を思い返した。

補習もなく、先に文を寄越して
いつ頃帰るからと言っていたとおりの予定で
文次郎は透子の元へ帰宅した。
傍らにはもちろん、
長期の休みを潮江家で過ごすことになった
あの生徒を連れている。
透子が何度か学園を訪れる機会をつくった甲斐があって、
少年はどこかはにかんだ様子も見せながらも、
すぐに透子と打ち解けた。
家の仕事を手伝い、
透子のつくった夕餉をもりもりと食べ、
文次郎に教わりながら春休みの課題にも取り組んで、
夜が更けると彼は疲れてくたりと眠り込んでしまった。
少年を布団に寝かせてやり、
透子は愛おしげにその寝顔を見やる。

「本当に、ひとり増えただけで、
 家の中がなんて賑やかなのでしょう。
 本当にわが家と思ってくつろいでくれていれば
 よいのですけれど」
「……まあ、だとしても俺がいれば、
 学園にいるのとあまり気分は変わらんかもな」
「あまり厳しくなさらないでくださいね、文次郎様」
「とは言ってもな……」

息をついて、文次郎は透子をじっと見つめた。
日中はしばらくぶりに帰宅した夫よりも
やんちゃな少年に構いきりだった透子である。
そろそろこちらを向いて欲しい──
文次郎は透子を呼んだが、
透子は少年を見つめたままで返事を寄越し、
文次郎を振り返ってはくれなかった。

「透子」
「はい」
「……聞いているのか」
「ええ、もちろんです」

こちらを向け、とは、あえて言いたくなかった。
お前が自分で気づいてくれと願ったが、
その気配は皆無である。

チリ、と胸の内でなにかが音を立てた。
意地の悪い感情が頭を擡げてくる。

(お前が悪いんだぞ)

文次郎は何気ないふうで立ち上がり、寝間へと入った。
透子の隣に座り込むと、
透子はやっと肩越しに文次郎へ視線を寄越した。
にっこりと微笑んで、唇の前に人差し指を立てる。

「疲れているんですね……起こさないように、
 静かにしましょうね」
「ああ」

透子はまた、少年のあどけない寝顔に視線を戻す。
お前が悪いんだぞ、と、
己に言い訳をするように文次郎はまた思う。
お前が悪いんだ。
ちっとも俺に気づかないから──

透子の肩に手を置いたとき、
透子はやっとはっとしたように
文次郎をまともに見返した。
もう遅い、そう思いながら、
文次郎は噛みつくように乱暴に妻の唇を奪った。
透子は抗って文次郎の肩を押す。

「あなた……いけません」
「なぜ」

透子は言葉に詰まって、
眠る少年をおろおろと視線で示した。
文次郎はなんでもないことのようにさらりと、
ああ、よく寝てる、と呟いた。
困惑したままの透子を抱き寄せ、
また少し荒々しい仕草で口付けを繰り返す。
少しずつ透子の息は弾み、頬が薄赤く染まった。
深窓の姫君として育ちながら、
乱されればこのような扇情的な顔をして、
なんて女だと脳裏で思う。
お前のせいだ、お前が悪いんだ。
俺をたきつけるのもこうして誘うのもすべてお前だ。
板の間に組み伏せられて、
透子はかすれ声で懇願してくる。

「やめてください、文次郎様」
「暴れるな……起きてしまうぞ」

透子はぴたと抗う腕を止めてしまった。

「酷い……」
「どっちがだよ」
「なにを仰っているの……」
「さあ?」
「また拗ねていらっしゃるの?」
「拗ねてなどおらんといつも言うだろ」

もう抵抗ままならない透子の着物の帯を解き、
文次郎はその胸元に口付けを落とした。
少しずつ乱れてゆく息の合間に、
透子はかすか、甘い声をあげた。

「声を出すな、透子……
 起こさんように静かにしようと言ったのは
 お前だろう」
「……文次郎様、……なんて意地悪を」
「なんのことだ?」

透子は泣きそうになりながら、
それでも結局最後まで
文次郎のすることを受け入れてしまった。
必死で唇を噛みしめて声を殺し、
傍らで眠っている少年の様子を
常に気にかけている透子がやはり少ししゃくに障って、
文次郎は大人げなく・いつになく激しく透子をせめ立てた。

(春休み中の食事は全部
 俺の苦手なもので決まりだな……)

透子の他愛ない八つ当たりはいつものことであるが、
今回は神妙に受けなければなるまい。

(お前が悪いんだぞ)

ことを終えて気が済んでみれば、
なんとも子供じみた真似に出てしまったものだ。
しばらく許してもらえないだろう。
気を失ってしまった透子の髪をそっと撫でて、
文次郎は苦笑した。

お前が悪いんだぞ。
お前がこんなにも愛らしいから。



「……透子さん?
 どうかなさった? 何か思い出したのね?」

くの一が愉快そうにそう問うた。
透子はかあっと、茹で上がったように真っ赤になって、
両の手でわっと顔を覆った。

「や……やめてくださいと申し上げましたのに……!!」
「まあ、なあに?
 どんなことを求められたというの?
 いけない男だわ、潮江くん、なんて鬼畜なの。
 こんなにすてきな奥様を苦しめるような愛し方をして」
「テメ……だ……黙れぇぇぇぇぇ!!!」
「わー、文次郎、落ち着いて!」
「怒るとは図星の証だぞ、文次郎……」

伊作が止めに入り、
仙蔵はさらりと静かな突っ込みを入れる。
透子は気の毒なほど縮こまり、
しばらく一同のほうに向き直ることすらできなかった。



 * * *



誰かが眠ってる横でって。ねぇ。
鬼畜ですみませんでした。
文次郎も嫁ちゃんに対してくらいは
攻めの立場でいることがあってもいいでしょう(笑
イニシャルをもじってかMと言われていても(笑

十月十日、の計算はこの文中では漠然と書いていますが、
その理論でいくと私はクリスマスベビーらしいです(笑
私はよく寝る子だったので親のらぶらぶに気づくことは
いっさいございませんでした。
お下品な話で申し訳ございません。
 
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